「どんな作品を作れば売れるんだろう?」
ネット販売を始めたばかりの頃、わたしもずっとそう悩んでいました。
でも、たくさんの作品や作家さんを見ているうちに、売れている作品には“見えない共通点”があることに気づいたんです。
それは、技術や流行ではなく、「誰かに喜んでもらうために作る」という考え方の土台のようなもの。
今回は、わたし自身の経験をもとに、「選ばれる作品づくり」に必要な視点をお伝えします。
作品づくりに迷ったとき、ヒントになればうれしいです。
売れている作品は、“企画”から始まっている

使う人の暮らしをイメージしている

確かに…“自分ならいつ使うか”を考えてくれてると、買うとき安心できる気がする
売れる作品には、「誰のために、どんな場面で使われるか」という明確なイメージがあります。
ただ「可愛いから」「作りたいから」だけでなく、その作品が誰の手に渡り、どんな毎日に寄り添うかまで想像されているからこそ、心に届くのです。
たとえば、わたしが作っている帆布バッグは、「通勤にも使える、きちんと感のあるトート」を意識しています。
服装やライフスタイルに合う色味やサイズ感など、使う人の朝の風景まで思い描くようにしています。
“売れるものを作る”のではなく、”使いたくなるものを作る”。
その違いが、作品の印象を左右します。
「このバッグがあると、通勤がちょっとラクになる」
そんな小さな変化こそが、選ばれる理由になるのかもしれません。
「必要とされる形」をとことん突きつめている
売れる作品は、「ちょうどいい」にこだわっています。
見た目のデザイン以上に、「入れたい物がきちんと入る」「開け閉めしやすい」「持ちやすい」など、使い手の“実際の動き”に寄り添った工夫が詰まっているのです。
わたしも、お客様から「水筒が入る深さがほしい」「長財布を縦に入れたい」といった声をいただくたび、形を見直してきました。
必要とされる形を見極めるには、自分でも試して、改良して、また試して…の繰り返しです。
「これがちょうどいい」と感じてもらえることで、毎日の使いやすさにつながります。
試作・改善を繰り返している
売れている作品は、試作や修正の積み重ねから生まれています。
完成品の裏には、見えない工夫や小さな修正がいくつも重なっていて、それが使いやすさや信頼感につながっています。

最初の頃は、完成させたらすぐ販売していましたが、今は「まず自分で使ってみる」ことを大切にしています。
数日使ってみると、「ここにポケットがほしいな」「もう少し軽いほうがいいかも」といった発見が必ず出てきます。
そうした改善が、使う人の「こうだったらいいのに」という思いに自然と応える形になるのです。
「伝えること」より前に、「伝わる設計」ができている
「強み」や「らしさ」が自然と出ている
売れている作品には、“その人らしさ”が自然ににじみ出ています。
無理に個性を強調しているわけではなく、「色づかい」「形」「素材選び」などに、その作家さんの世界観が一貫して感じられるのが特徴です。
わたし自身も、「シンプルで上品な帆布バッグですね」と言っていただくことが増えました。
それは意識的に「派手さよりも暮らしになじむ美しさ」を選んできたから。
作品に込めた思いが自然と伝わると、「これ、まさに探していたもの」と共感してもらえる機会が増えてきます。
素材選びに理由がある

売れている作品は、「なぜこの素材を選んだのか」がはっきりしています。
見た目の好みだけでなく、耐久性・質感・扱いやすさ・季節感など、使う人のことを考えた“理由ある素材選び”が、作品の説得力を高めています。
わたしの場合も、帆布の中でも国産帆布を選んでいますが、それは「軽くて自立し、しなやかさもある」という特徴が、日常使いのバッグにちょうどよいから。
内布に使うオックス生地も、「厚みもあり、内側からもしっかり支えてくれる」ことを重視しています。
「これなら長く使えそう」と思ってもらえる素材選びは、それだけで安心感につながります。

軽さや扱いやすさを意識したことで、リピーターが増えてきた気がします
価格に対して納得感がある仕上がり
売れる作品は、「この価格なら納得」と思ってもらえる仕上がりになっています。
ただ安ければ良い、ということではなく、価格に見合った丁寧さや完成度があるからこそ、信頼して買ってもらえるのです。
わたし自身も、価格を決めるときは「材料費の〇倍」という計算を基本に、「この仕上がりでこの価格は高すぎないか」「納得してもらえる自信があるか」を自分に問い直すようにしています。
とくに縫製の丁寧さや糸始末など、見えにくい部分にも手を抜かないことで、「思った以上によかった」という声につながることが多くなりました。
「この価格でこの仕上がりならうれしい」と思ってもらえることが、次の購入にもつながっていくのだと思います。
私の価格の決め方は、こちらで書いてます。

わたし自身が学んだ「作る前に立ち止まる」大切さ
「好きなもの」だけでは伝わらないこともある
「好きだから作る」だけでは、相手に届かないことがあります。
自分がときめく素材や形でも、使う人にとっては「どこで使うか想像できない」「サイズが合わない」と感じられることもあるからです。
わたしも最初は、自分の「作ってみたい」という気持ちを優先していました。
でも、売れないときにふと「これは誰のための作品なんだろう?」と考えるようになり、そこから使う人の暮らしや場面を想像してみるようになりました。
「これがあってよかった」と思ってもらえる作品は、やはり“誰か”に向けた想像から生まれていると実感しています。
「売れるもの」ではなく「必要とされるもの」を考える
「売れるものを作る」ではなく、「誰かにとって必要なものを作る」視点が、作品の価値を高めてくれます。
流行や人気作品を参考にするのは決して悪いことではありませんが、それだけを追いかけると、自分の気持ちが置き去りになってしまいます。
わたしも一時期、「売れている人の真似をした方がいいのかも」と思ったことがあります。
でも、心がこもらない作品はなぜか反応も薄く、やっぱり“誰に届けたいか”を考えてから作った方が、お客様の声も変わってくると気づきました。
「あるとうれしい」「わたしにちょうどいい」
そう思ってもらえるものづくりが、結果として選ばれる道につながるのだと思います。

“誰のために作るか”を考えるって、やっぱり大事なんですね
まとめ|考え方を整えるだけで、作品は自然と伝わり始める
売れているハンドメイド作品には、見た目以上に“考え方”の共通点があります。
誰かの暮らしを想像し、必要とされる形を追い求め、自分のこだわりや強みを自然とにじませる。
そうした姿勢が、使う人の心に届く作品を生み出しているのだと思います。
「どう作るか」だけでなく、「なぜ作るか」「誰に届けたいか」。
その視点に立ち返ることが、あなたの作品をもっと魅力的にしてくれるはずです。
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